道元断章/中野孝次

http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/X/0241150.html


若田教授から。「セネカの言葉」がよかったので、中野孝次つながりでもう1冊。
道元、素晴らしいですね(笑)今まで読んできた、スピノザウィトゲンシュタインストア派と類似点が多い*1。もちろん、表現の仕方やどこに重点を置くかの違いはある。しかし、ベースのところは同じだと感じた。
また、中野孝次の意訳も的を射ている。とても読みやすい。
以下、いくつか引用するが、道元の文章を主に紹介する。


「生は来にあらず、生は去にあらず。生は現にあらず、生は成にあらざるなり。しかあれども、生は全機現なり、死は全機現なり。しるべし、自己に無量の法あるなかに、生あり、死あるなり(全機)」(10頁)


「死はいとうべきものでない。それどころか、死は生とともに必然なのであり、死があるからこそ生があるのであった。しかも道元は、生から死へうつる、とは考えない。死から生にうつるとも言わない」(18頁)


「生といふは、たとへば、人のふねにのれるときのごとし。このふねは、われ帆をつかひ、われかぢをとれり。われさををさすといへども、ふねわれをのせて、ふねのほかにわれなし。われふねにのりて、このふねをもふねならしむ(全機)」(39頁)


「しかあれば、一日はおもかるべきなり。いたづらに百歳いけらんは、うらむべき日月なり、かなしむべき形骸なり(行持・上)」(65頁)


「しかあれども、その昨今の道理、ただこれ山の中に直入して、千峰万峰をみわたす時節なり、すぎぬるにあらず(有時)」(89頁)


「いはゆる有時は、時すでにこれ有なり、有はみな時なり。丈六金身これ時なり、時なるがゆゑに時の荘厳光明あり(有時)」(93〜94頁)


「拳固一つ、全世界とはただこれだけだ、という。尽十方世界は自己の外にあるのでなく、それはそのまま自己である、自己にあるとはこのわたしが握った拳固、これこそが全宇宙だ」(100〜101頁)


「あきらかにしりぬ、心とは山河大地なり、日月星辰なり(即心是仏)」(123頁)


「人のさとりをうる、水に月のやどるがごとし。月ぬれず、水やぶれず(現成公案)」(204頁)

*1:さらには、ニーチェハイデガーも入れてよいだろう