要録/エピクテトス

図書館から。「語録」に続けて、「世界の名著」第13巻に収録されている。
弟子のアリアノスが、タイトル通りにエピクテトスの教えを短くまとめたもの。「語録」から抜粋されている部分もある。が、「語録」は全巻が現存しておらず、また、アリアノスが独自にまとめた部分もあるようで、「要録」のみに見られる表現もある*1
とりあえず、これでストア派は一区切りになるだろうか。


「もろもろの存在のうち、あるものは私たちの権内にあるけれども、あるものは私たちの権内にはない。・・・もしきみのものだけをきみのものであると思い、他人のものを、じじつそうであるように、他人のものと思うならば・・・だれもきみを妨げないだろう」(1章)


「航海の途中、船が陸についたとき、もしきみが水汲みに船をおりるならば、きみは途中道草をくって、小さな貝殻や小さな球根を拾い集めてもいいが、心を船のほうへ向けて、船長が呼びはしないかと、たえず振り返るべきである。そしてもしも呼ばれたならば、それらすべてを放棄すべきである・・・人生においてもそのとおりで・・・もし船長が呼ぶならば、それらすべてを放棄し、心惹かれずに船にいそぐがいい」(7章)


「出来事が、きみの好きなように起こることを求めぬがいい、むしろ出来事が起こるように起こることを望みたまえ」(8章)


「きみは供宴においてのようにふるまうべきだ・・・あるものが回ってきみのところに来た、手を伸ばして行儀よく取りたまえ。通過した、引きとめるな。まだ来ない・・・きみのところへ来るまで待つがいい。・・・そうすれば、他日きみは神々の供宴に列する資格のある者となるだろう。だが、もしきみがきみのところにおかれたものを取らないで見過ごすならば・・・神々と共に支配する者となるだろう」(15章)


「死や、追放や、すべて恐ろしく思われるものを、毎日目のあたりに思い浮かべるがいい、すべてのうちでとりわけ、死を。そうすれば、きみは・・・度を越えてなにかを欲張ることもないだろう」(21章)


「きみはいますぐ、きみ自身のために、きみのあり方と生き方を決めておいて、それをきみ独りのときでも、人々と会うときでも、守るがいい。たいていのばあいは沈黙せよ。やむをえないことを話せ、しかもわずかのことばで。話すように求められているときには、話すがいい、しかし、ありふれたことは話すな」(33章)


「肉体に関する事柄で時間を費やすこと・・・は、知恵のないしるしだ。ひとはこれらのことを片手間になさねばならない。きみの全注意は心に向けよ」(41章)


「ひとが褒めても、心のなかではその褒めた人を笑い、また非難されても弁解しない。病み上がりの人のようにしずしずと歩いて・・・すべてにたいして、ほどほどに意欲する。・・・一言で言えば・・・自分自身にたいして用心するのである」(48章)

*1:もう1つ言うと、「語録」は抄訳だったということもある