反時代的考察 第4編/ニーチェ

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白水社版全集・第1期第5巻に収録。第3編から約2年後、1876年に出版。
タイトルにある通り、「バイロイトにおけるリヒャルト・ヴァーグナー」について論じられている。
今巻において「ヴァーグナー」に帰せられているのは、「詩人」「必然と自由」「率直」「回想」「高みからの眺め」「死」「笑い」「新しい様式」「別の存在になること」などの要素である。
以上のように、まさに「自己への配慮」の象徴としての「ヴァーグナー」という位置付けで、ヘラクレイトスと並べられてもいる。
しかし、「ヴァーグナー自身を遠い異国から眺める」や、ヴァーグナーは「グロテスクな喜劇」といった表現もあり、単なるヴァーグナー賛美の書というわけではない。


「みずからふたたび自然となることを学びたまえ」(51頁)


「稀有の星の下に生まれた天賦の才の出会うすべてが苦しい試練を重ねるうちにも次々に幸運や収穫になり変わる・・・彼はどんな危険な目に遭っても勇気百倍し、勝利を得るごとに思慮深くなり、毒物や不幸を糧にしながらもかえって壮健になっていく。周囲の嘲笑や反対も彼を鼓舞する刺激剤のようなものだ」(同上)


「しみじみとした回想の幸福のうちには晩夏の深い悲しみが漂っており、自然全体が黄ばんだ夕陽のなかでひっそりと静まり返っているのである」(74頁)