遺された断想(1882年7月〜1883年夏)/ニーチェ

白水社版全集・第2期第5巻に収録。
時期としては、「華やぐ知慧」の出版後、「ツァラトゥストラはこう言った」第1部の完成直後までの遺稿にあたる。
主な内容は、「ツァラトゥストラ」や後の「善悪の彼岸」の草稿、メモ、走り書き、アフォリズムなどである。
そのほか、古代の哲人への周到な目配せ、「悲劇の誕生」の頃の自分を振り返り、位置づけ直す文章、「力への意志」「力の感情」「衝動」といった概念による「人間」「歴史」「共同体」などの一元的把握を試みる断章などが、注目に値する。
この遺稿を読めば、「同じことを少しづつ違う言い方で、何度もずらして書いていく」という自己のテクノロジーニーチェが実践している様子が、よくわかる。


「君は、舞踏の喜びを持つ者と人にみられなくてはならない。舞踏は真理の証明である」(3番1節98)


「今日私はすべてを黄金に変える、何なりとお前の望むところを私に与えるがよい――運命よ!」(4番76節)


「必然的になれ!明るくなれ!美しくなれ!すこやかであれ!
この人は飛んでいる鳥を愛し、かの人は、曙光と海のみを見る」(5番1節198)


「自由な者たちのみがもつ真理と勇気(真理は一種の勇気である)」(7番84節)