遺された断想(1884年春〜秋)/ニーチェ

白水社版全集・第2期第7巻に収録。
ツァラトゥストラはこう言った」第3部完成後、第4部執筆までの時期にあたる。
主な内容は、次の通り。
・「ツァラトゥストラ」が、第3部で完結したと考えたニーチェは、次の著作のプランを様々に構想している。「ディオニュソス」や「永遠回帰」など、著作のタイトルだけの断想も数多い。
・現代の時代状況の批判が「畜群」としてまとめあげられ、そうではない、別の生き方が「高貴なる者」として形式化され、両者の特徴を描く断想。
・すべてを「力」の現れ=表れとして把握しようとする断想。「力」は「感情」「衝動」などとも呼ばれる。これに関連して、スピノザへの言及も増えてくる。
以上のような内容が、非常に簡潔に、率直に、言葉になっていて、著作とは異なる顔のニーチェを味わうことができる。


「時を過たずに死への意志をも持てるように生きること!」(25番226節)


「一切が必然的に結び合わさっていると感じられる孤独の中で、私には一切の存在者が神的である」(26番117節)


「この賤民的時代に、生来高貴な精神は、毎日を位階の思想でもって始めなければならない」(同番260節)


「きっと君たちは私の新しい憧憬を、有限なものへの憧憬をわかってくれよう?」(同番287節)