遺された断想(1887年秋〜88年3月)/ニーチェ

白水社版全集・第2期第10巻に収録。
時期としては、「道徳の系譜」完成後から「ヴァグナーの場合」完成前まで。
まとまった著作の構想を練っており、「力への意志」や「価値転換」といった、さまざまなプランが残されている。
また、ボードレールトルストイドストエフスキーの著作からの抜き書きや、それに対するニーチェのコメントも多い。ニーチェの読書スタイルが垣間見えて、面白い。


「真理は、…創造されるべき何ものかであり、…能動的に決定していくことであって、『それ自体』固定していて決定されている何ものかを意識することではない」(9番91節)


「運命は、正視しないで飲み込まねばならない。そういう飲み方をすれば、…味が良くなるものだ」(9番113節)


「偶然が自分を助けに来るまで、…自分の正しさを守り通す」(9番118節)


「あるがままの世界に対してディオニュソス的に然りを言うというあの形…あるがままの世界の無条件の回帰と永遠性とを願う境地」(10番3節)


「引き裂いて距離を作り出すこと、けれども対立は作り出さないこと」(10番63節)