遺された断想(1888年初頭〜88年夏)/ニーチェ

白水社版全集・第2期第11巻に収録。
時期としては、「ヴァグナーの場合」の執筆から「偶像の黄昏」「アンチクリスト」の完成前後まで。
この年に書かれる6作品のための断想が多い。特に、近代という時代を「デカダンス」としてまとめて、集中的に考察している。
また、16年前の著作である「悲劇の誕生」を反省・批判・再考察しているアフォリズムも多く、興味深い。


「私の欲したことは、人が自己自身を尊敬することから始めよ、ということである。すべてその他のことは、ここからつづいて出てくる」(14番205節)


「貴族的とは何か?たえず体面を保つということ。・・・幸福は大多数の者にまかせるということ。・・・多数の者に対して、言葉ではなく、行動によって、たえず反対すること」(15番115節)


「認識におけるあらゆる成果は勇気から、自己に対する苛酷、自己に対する潔癖から生まれる・・・ディオニュソス的な世界肯定、あるがままの、割引きもせず、例外もつくらず、選択もしない世界そのもののディオニュソス的肯定への到達を欲する、――それは永遠の循環、・・・生存に対してディオニュソス的に立ち向かうこと、――これこそおよそ哲学者たる者の到達できる最高の状態である。それをあらわす私の公式が運命愛である」(16番32節)