遺された断想(1869年秋〜72年秋)/ニーチェ

白水社版全集・第1期第3巻に収録。
時期としては、バーゼル大学着任後から「悲劇の誕生」出版を経て、連続講演「われわれの教育施設の将来について」を行ったところまで。
悲劇の誕生」と「われわれの教育施設の将来について」に関するメモ、走り書き、構想が多い。この時期のテーマは。「ギリシャ」と「教養」と言えるかもしれない。
書き溜めたものを組み合わせて作品をまとめていく、ニーチェの創作過程が、よくわかる。
初期特有のものと、後期を思わせるもの、両方の断層が混在している点も、興味深い。


「あの満ち足りた微笑みは、まさに死なんとする者の眼差しの輝きであり、浄化にも似たものがある。もはや何も望むことなく、それゆえ欲望に駆られる者には、冷淡な、無愛想な、浅薄な印象を与えることになる」(7節162番)


「人は自分の教養から、よってもって生計を立てるべき生涯の職業を得ることはできない」(14節15番)


「教養の面で高度に育成されればされるほど、人間はそれだけ孤独になる。すなわち、彼はあらゆる時代の偉大な人々と交わるのであるが、この高尚な交わりが彼をいくらか用心深くさせる。今や、彼は『通用する』人間ではない」(14節16番)